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1.保蟹寺(ほうかいじ)を訪ねて

(清水歴史探訪より) 

 

清水歴史探訪~~清水歴史探訪~~清水歴史探訪~~

毎月第二土曜日のこの時間は、清水区内各地に残された歴史の香りを訪ねます。

北街道から保蟹寺を目指して
保蟹寺(ほうかいじ)の入り口(狭い道を入って)
保蟹寺(ほうかいじ)に到着
 
禁 葷 酒 (きんくんしゅ)
 
 いきなり、気になる『石碑』が建っておりました。葷(くん)とはねぎの類に属する植物で、臭いので酒と同様に禁じられているそうです。葷は五葷とも呼ばれ、"にんにく" "ねぎ" "玉ねぎ" "にら" "らっきょう" の5つであります。解説によりますと、これらの葷は性欲を刺激するから駄目だそうです。となると、女人はもっと入門禁止なのであります。

 葵区との境に近く、梶原山の名前で知られる山のふもと。住宅地の奥に、曹洞宗 富谷山 保蟹寺(そうとうしゅう ふこくざん ほうかいじ)があります。梶原景時とのご縁でも知られるこのお寺には、ちょっと変わった姿の仏様が祀られています。

その保蟹寺に、檀家総代の設楽 斉(したらひとし)さんを訪ねました。

曹洞宗と座禅について
 
 私は子供の頃、『真言・天台は、お公家さん。禅は武家のたしなみ。浄土・日蓮は、一般庶民』と教わりました。禅といば、禅宗の臨済宗や曹洞宗などが浮かびます。さて、平成15年におけるお寺の数は、真言宗系 7,871・天台宗系 3,952 ・計11,823(12,828)、浄土宗系 8,882 ・浄土真宗系 20,601 ・日蓮宗系 5,628 ・35,111、臨済宗系 5,708 ・曹洞宗 14,664・計20,372となっており、武家中心の禅宗としては、予想外に頑張っている感じがいたします。
 ところで、禅宗には臨済宗・曹洞宗以外にも黄檗宗がありますが、圧倒的に臨済宗と曹洞宗が有名です。臨済宗は妙心寺派が有名ですがいくつもの宗派に分かれております。これに対して曹洞宗は単一宗派であります。しかも、単一宗派としては最大の寺院数を誇っており、江戸時代や大正時代と比べてもお寺の数が増えているそうなのです。
 次に、曹洞宗の御本尊は基本的には釈迦牟尼仏でありますが、釈迦牟尼仏以外の仏像を本尊にしているお寺も多数あります。それは、全国に広まる過程で、他宗の寺院を曹洞宗に改宗したときに、そのお寺にまつられる仏像をそのまま本尊として残したからです。したがって、曹洞宗の本尊は一定していないとの印象があります。 
 ところで、臨済宗と曹洞宗では座禅の仕方が違います。

『臨済宗』の座禅は看話禅(かんなぜん:「おしゃべりな禅」と曹洞宗が揶揄したのです。)と呼ばれ、有名な人物に一休禅師がいます。公案と呼ばれる厳しい問答が重視される、臨済宗の気風を表しています。臨済宗の世界は、まさに「禅問答」の世界なのであります。

これに対し、『曹洞宗』の座禅は黙照禅(もくしょうぜん)と呼ばれています。九年間坐り続けた達磨大師のように、壁に向かって黙々と坐り続ける面壁座禅が基本です。

臨済宗の座禅会では座禅者同士が向かい合い、曹洞宗では壁を前にして坐ります。また臨済宗の座禅会では問答が行われることはありませんが、言葉を尽くす禅風からか、座禅が終わると法話を聞かせて頂けることも多いです。

臨済宗の座禅
曹洞宗の座禅

「このお寺、もう400年ぐらい経っているんでしょうね、できてからね。そういう謂れ(いわれ)のお寺なんですけれども、このお寺の特色と言いますと、蟹薬師如来が本尊というのがこのお寺の特徴なんです。

 薬師さんという本尊さんは世の中にたくさんあるんですけれど、蟹に乗った薬師さんというのは、本当に珍しいんですよ。聞くところによると、愛知県にあって、埼玉県にある(調べてみましたが探せませんでした。)とか、そんな話も。

蟹を本尊とする寺院について
 
 住職の日沢義孝に聞いたところ、蟹を本尊とする寺院は日本に3つあるそうです。1つは、京都・木津川の蟹満寺、2つ目は岐阜県可児(かに)郡御嵩(みたか)町の願興寺、そして3つ目がこの保蟹寺だそうです。
普門山蟹満寺(かにまんじ)
京都府木津川市山城町綺田36 

 寺の所在地の地名綺田(かばた)は、古くは「カニハタ」「カムハタ」と読まれ、「蟹幡」「加波多」などと表記された。この寺の創建年代は周辺の発掘調査から飛鳥時代後期(7世紀末)の創建と推定されている。その後、江戸時代の正徳元年(1711年)智積院の僧亮範が入寺し再興された。今昔物語集等に記載がある蟹の恩返しの伝承で有名である。国宝の釈迦如来坐像(像高2.403m、重さ2tの金銅製)の造立は奈良時代以前と考えられ、同様の初期の丈六金銅仏は飛鳥大仏、現興福寺仏頭、薬師如来坐像のみである。なんとなく、保蟹寺より有名?

 

<蟹満寺縁起>

 昔、このあたりに善良で慈悲深い夫婦と一人の娘が住んでいたという。娘は、幼い頃から特に慈み深く、いつも観音経の普門品を読誦して観音さんを信仰していた。
 ある日、村人が、多くさんの蟹を捕えて食べようとしているのをみて、その蟹を買って草むらへ逃がしてあげた。父親が、畑仕事をしていると、蛙を呑み込もうとしている蛇を見つける。蛙を助けようとした父親は思わず「蛙を放してやったら娘を嫁にくれてやろう」と言ってしまう。すると、蛇は、蛙を放して姿を消した。
 その夜、五位の衣冠を着た青年が家を訪れてきて、昼間の約束を迫ってきた。父親は、困り果てて、嫁入仕度を理由にして、三日後に再び来るようにと青年を帰した。
 三日後、家族は、雨戸を堅く閉ざして恐ろしさで閉じこもっていた。青年は、怒り、本性を現して蛇の姿となって荒れ狂った。
 娘が、ひたすら観音経の普門品をとなえていると、温顔に輝く観音さまが現われて「決して恐れることはない、汝らの娘は慈悲の心深く常に善良な行いをされ、また我を信じて疑わず、我を念ずる観音力は、この危難を排するだろう」と告げて姿を消した。すると、雨戸を叩く音が消え外も静かになった。
 夜が明けて、外に出てみると、ハサミで切り刻まれた大蛇と、無数の蟹の死骸が残されてた。家族は、観音さんの守護を感謝して、娘の身代りとなった、多くの蟹と蛇の霊を弔うため、御堂を建てて観音さんを祀り、「蟹満寺」と名付け、観音経の普門品をとなえていたことから「普門山」と号したといわれる。
(京都通百科事典より)
大寺山願興寺(がんこうじ)
岐阜県可児郡御嵩町御嵩1377-1 
 名鉄広見線「御嵩駅」を降りるとすぐ目の前にある岐阜県可児(かに)郡御嵩(みたけ)町の「願興寺(がんこうじ)」。入り口には立派な鐘楼門がある。この辺りでは通称「蟹薬師」と呼ばれ、広く親しまれている。ある時、庵の近くの池に、数千の小蟹に乗った薬師如来像が現れた。このことから「蟹薬師」と呼ばれるようになったそうだ。このときに蟹に乗って現れた薬師如来像は、本尊「薬師如来座像」の胎内に安置されているとのこと。願興寺の紋章が「蟹牡丹」なのも、この伝承による。 
薬師如来の証拠に、左手に薬壺を持っております。
願興寺の蟹。蟹瓦?
願興寺の紋章:蟹牡丹
願興寺の紋章「蟹牡丹」がお寿司に…

 とにかく少ない本尊さんです。もちろん、蟹に関係したお寺でございまして、謂れと言いますと、まあ、いわゆる物語ですから、『昔々のはなし』なんですがね。

 『昔々、この村に疫病がものすごく流行った』ということが言われています。『その疫病でバタバタ、バタバタ・・』というと極端ですけれど、亡くなる人が多くて、村人が非常に困っていたような物語があります。

 そうしたところがね、うちの方のこの保蟹寺の下の方に巴川っていう川が流れているんですけれども、今は改修されて立派な巴川ですけど、その頃の巴川というのは、うねうねと蛇行した巴川なんですが、その巴川へ、蟹に乗った何かが流れてきたというのを見つけたんですよね。

 それが、いわゆる蟹薬師さんだったんです。そして、薬師さんに陸へ上がってもらって、そこへお堂を建てたんでしょうね。だから、その近くにね、大内地区なんですけど、『薬師堂』という地名が今も残っております。薬師堂へいわゆるお堂をつくってお祀りしたんじゃないですかね。

 その薬師さんを、このお寺の裏に来ていただいて、『薬師平(やくしだいら)』というその地名もこのお寺の裏にあるんです。ある程度の名跡のある平(たいら)がありまして、そこのことを未だに『薬師平、薬師平』と呼んでおります。

 それからここへ下りてきたという風に世の中では言われています、現在のお寺のあるところへ。それがこの保蟹寺の謂れなんです。

 

左の写真の奥が、薬師平

 謂れと色々言いますと、このお寺も、私も設楽(したら)って言いますけど、設楽の姓がある程度いるんです。ここの開基(かいき)さんというのは、名前で言うと設楽四郎左衛門(したらしろうざえもん)っていう人がこの保蟹寺の開基さんということになっているんです。

 というわけで、設楽と非常に関係のあるお寺なんです、特に蟹に関係のあるお寺。

 その蟹に関係のあるお寺のことをいいますと、ここに、横に川が、沢が流れておりますけれど、その川を『薬師沢(やくしざわ)』というんです。今は改修されてコンクリになっちゃいましたので、蟹はいませんけれども、その昔の川の時代は、蟹がたくさんいたんですね。このお寺の関係する、『この薬師沢の蟹はとってはいけない、とって食べてはいけない』という、私たちが子供のころからそういう風に言われていますね。

 とにかくここは、『保蟹寺』、名前の示す通りに、蟹に関係したお寺さんなんです。そういうわけでございます。」

「お薬師さんが乗ってきた蟹なんですけれども、これはどんな蟹だったんでしょう。」

「本尊さんが乗っておりますが、普通の蟹ですよ、この、何というか足広げた。その上へ立っているんですよ。台というか、蟹の上へ本当に立っている、そういうお薬師さんです。

 いわゆるお薬師さんというと、お医者さんの関係ですから、いろいろ健康を願ってお参りに来る人たちも、ここにはおるんですけれど、そういう謂れのあるお寺でございます。」

「大きさは、どのぐらいの大きさなんですか。」

「本尊さんですから、写真もありますけれどね、小さいんですよ、本尊さんといって祀ってあるのは。30センチないかな、それぐらいのもんですよ。立っている仏さんなんです。蟹の上へこう直立に立っている、そういう仏さんです。それが乗るようになった蟹が、蟹もちゃんと台座があるんです。両方に足を広げた蟹ですよ、そういう形ですね。」

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税理士法人森田いそべ会計
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代表 森田行泰
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