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2.なまこ壁の家の中で
 
(清水歴史探訪より)
『なまこ壁』と『分厚い塗り壁』、この建物を今も支えてくれているのは、明治の技術なのですね。さて、吉田さんのお宅は、かつてはお菓子屋さんとして、子供達にも親しまれていました。
 
「当時は、お菓子作りとは、どんな風になさったんですか?」
「飴の方は、『茶飴』(注)っていう飴です。皆さんご存知だと思うんですが、どこを切っても『茶』という字が出てきますよね。あれは10キロの飴の中に、お茶という字を組み込んでいくわけですよね。マゴマゴしていると、どんどん飴が固くなってしまうんですよ。怒られ怒られやりました。それで、覚えましたよ。」
 
(写真)かしやと書かれた立看板です
 
 
(注)茶飴について:私の記憶によると、緑色(お茶の色)の飴の中に、白色の『茶』という文字の飴が組み込んでありました。棒状にした白い飴を、上手に緑色の飴に入れて、長い飴を切ると、必ず『茶』という字が出るように作ったと思われます。その当時の職人技ですね。
当時の看板です。静岡県の県の字が昔の縣が使われています。
「では、こちらへお嫁に来られて、それから飴作りを?」
「飴というのは、空気を入れると、白くなるんですよ。だから茶と組む部分だけ、別にとって、それに空気を練るようにすると白くなるんですよね。それを棒状にして、それを組み込んでくわけなんですよ。10キロの飴の中に、お茶という字が大きく出ますよね。伸ばしていくと1センチ四方の飴で、中にお茶っていう字が出てくるんですよ。伸ばしてくのが主人の手の技ですね。」
「じゃあ全部手仕事なんですね?」
「機械じゃできないみたいですね。」
「あの当時の看板みたいなものは、残ってたりするんですか?」
「はい、残ってますよ。」
「木の・・・」
「静岡県・・だいぶ前ですね。静岡県の『縣』の字が、もうこんな字、使わないじゃないですか。」
「右側が、糸になってる古い漢字の『縣』ですね」
「指定が『飴菓子製造工場』」
「お店の名前は、これで・・・」
「なんと読むでしょう。これで『僊菓堂(せんかどう)』と読むんですよ」
「『せんかどう』」
「これだと、国語辞典に出てないんですよ。本当の看板はあれですね。」
 
(写真)お店の名前の看板です。僊菓堂と書いてせんかどうと読みます。
「本当の看板といいますと、店の間(みせのま)のちょうど、鴨居の上にかかってますが・・・額に入っていて…『ネリヨウカン、カステーラ』…カステーラ…カステラじゃなくて------。」
「だから子供達がくると、『おばちゃん、カステーラっておかしいよ』って言われるんですね。」
「これ、文字が筆とか墨とかで、書かれたものではないようですが?」
 
(写真)螺鈿という方法で装飾された本来の看板です。
 「これは、貝を細かくして、はめ込んであるみたいで、そうそう螺鈿(らでん)、螺鈿(らでん)。タイの学生さんが、触ってみたいといって触ったんですが、『盛り上がってるようで盛り上がってはいない。』って言ってましたね。」
「では、磨きあげてるような感じですかね-----。そして許可証を…」
 
 タンスの中に閉まって・・・
 
お菓子の陳列棚の写真です。
「タンスというかこれはお菓子の陳列棚なんですよ」
「あ、そうなんですか!木で造られていて…」
「これがね、これが内側で、向こう側にはガラスがはまっていたわけですよ。そしてお菓子を並べると、お客様が向こう側からみてこのお菓子を下さいというと、ここを開けて出してあげるという」
「まさにショーケース…じゃあその中に大事にしまわれていましたけれども、プラスチックのケースの中に…かなり小さいですね」
「これがお菓子を売って歩くのに使った、鑑札なんです。その頃は駿河の国、蒲原宿90何番地って書いてある。」
「駿河の国なんですね。これ時代的にはいつ頃なんですか?」
「これは明治20年ですね。」
「明治20年5月…と書いてありますね!ちゃんと焼印が入っていて」
「この鑑札がないと、売って歩くのに駄目だったみたいですね」
「そうですか。これ大きさとしては縦が7cmくらい、横が5cmくらいですね。木の板なんですけれども。携帯人、吉田作太郎さん」
「二代目の方なんですね。今は5代目だから、二代目の人ですね」
「貴重な鑑札ですねえ。」
 
『まち家造り』、『なまこ壁』、『塗り家造り』と、昔の様々な技や技術が生き続けるこの建物には、まだまだ秘密がありました。
 
「次の間を見せて頂きますと、そこに階段があるんですが…階段の行先はどうなっているんでしょうか?とっても不思議な廻り階段のようになっているんですけれども」
「行先は二階です。」
「戸がついていて」
「これを押すと二階になるんですけど、家は外からみると二階の家じゃないんですよ。こういう家が蒲原にはたくさんあるんです」
「隠し部屋とかではなくて」
「屋根の傾斜を利用して物置とか、使用人の部屋とかに使ったとこなんです。これ、つし二階(注)って言うんです。蒲原には結構ありますよ。外からみると二階屋じゃないけど、お家の中に入ると二階があるという家が。」
 
(注)つし二階とは厨子二階と書くようです。蒲原宿の街道は、大名行列が通るため、二階から大名行列を見るような不遜なことはできません。そこで、二階建てには見えない厨子二階が考案されたと思われます。
(写真1
二階へ続く廻り階段です。
(写真2)
少し近づいて撮った階段の写真です。
(写真3)
階段の手すりの写真です。
「不思議な構造ですね。」
「この階段(写真1もね、初めは箱階段と言ってたんですけど、箱階段じゃないんですよと、教育委員会に言って、そして『らせん状』って書き直してもらったんですよ」
「箱階段っていうと、引き出しみたいになっている、中が物入れになってるのが箱階段ですよね」
「大体そうなんですけど、うちのは物入れにはなってないんですね。三角なんですよ、足のところが」
「ちょうど廻り階段(写真2)みたいになっていますよね」
「あの一本の鉄の棒(写真3)みたいなのありますよね。あれにつかまって登ってくんですが、あれを中心に踏み枝が三角(写真4)なんですよ。」
「ちょうど、あの廻り階段の廻ってる中心のあたりに、一本鉄の棒が縦にあって、これが手摺りなんですね」
「こういう階段(写真5)ないらしいですよ。筑波大学の工学の先生が見学に来て、『全国まわるんけどこれは初めてだ』と、大事にしてくださいと言われました」
 
(写真4)
階段のアップの写真です。下から上へ上がっていく毎に三角の面積が小さくなっていきます。
(写真5)
とても珍しい階段です.
 
昔はここのドアをスライドして使っていたようですが、現在は使われていないそうです。下に車輪が付いていて右にドアをスライドすることができます。
1.なまこ壁の家を訪ねて
第弐話
3.蒲原宿の話
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税理士法人森田いそべ会計
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代表 森田行泰
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社員 磯部和明
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