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3.波止場浪漫その3(大正)

11.大正その1 カンカン帽(大正4年:40歳):次郎長の娘

 けんは港橋から波止場へ唐茄子を抱えて歩いていた。波止場に出る手前の軽便鉄道の駅で、物干し竿をかついだ男の話を聞いた。暑いのに、上着にネクタイ、頭にカンカン帽、眼鏡に口髭。

植木重敏(元治元年~昭和7年)
山本けん(昭和9年~大正10年)

 けんが末廣に帰ると真っ先に物干し竿を見つけ、まさかと思い頭がかっと熱くなった。吉田安兵衛の女房で末廣を手伝っているヒサが、『客人』について説明した。やはり、客人は植木先生であった。植木先生は末廣に泊まりに来たのだった。

 末廣の茶の間で、隣家の芝栄、けんの姉でおちょうの姪はるの亭主入谷清太郎、その息子の麟助が植木をかこんで酒盛りをしながら世間話をしている。

 酒盛りが終わった後、植木はけんに「おちょうさんの具合がよくないから見舞いに来たこと」と「次郎長の葬儀のあとおけんさんになにがあったのか」と問いかけたのだった。

12.大正その2 一葉(大正4年:40歳):一葉びいき

 昨夜、あびるほど酒を飲んだ植木は早起きをして散歩に出かけていた。後を追ったけんと植木は、清水の変貌ぶりや昔話をした後、けんは植木にしばらく末廣にいるよう提案した。

 けんがおちょうの看病している時、姉のはるがあがってきた。はるはけんに鈴与のおたつさんに届け物をするよう頼みながら、植木先生のことがウワサにならないよう釘をさした。

けんがおたつさんに届け物をすると、おたつさんは植木先生の昔話をした後、樋口一葉全集をけんにプレゼントしてくれた。けんは、帰りに梅陰寺に寄った。そこで偶然、植木先生に会い、一葉の話や漱石の話、そして亡き天田五郎の話をした。帰り際、けんは植木にウワサに注意するよう促した。

WEBより
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13.大正その3 早春賦(大正5年:41歳)

 正月、千畳楼の男衆(おとこし)松吉から植木先生に急患の知らせが来たが、植木は留守だった。病人は赤ん坊であり、けんが、代わりに千畳楼に行ったが、赤ん坊は虫の息だった。その時、植木先生がかけつけ、「赤ん坊は遊女の白粉(おしろい)が原因の鉛の毒だ。」と説明する。けんは、赤ん坊の母の遊女いすゞになぐさめの言葉もなかった。

 けんは千畳楼のイソと「いすゞの赤ん坊の父親の話やいすゞの母親のお蔭で借金が減らない話」をする。

 けんは末廣に帰りおちょうの様子を見に行く。布団の上からおちょうの胸を軽くたたいて拍子をとりながら、けんはおちょうをおもい、いすゞをおもい、植木をおもい、「早春賦」を歌った。

 植木は「おけんさんに逢いたくって帰って来たのです」とはなし、「あやまちを犯したかもしれないが、おけんさんを想う気持ちに、くもりはない。」と告白する。

14.大正その4 フリーラブ(大正5年:41歳)

 けんと植木先生は男女の仲になった数日後、夜更けに隣のけんの姉入谷はるが入って来た。この頃は、戸締りをしないのが普通だった。けんは、はるが気がつく前に、襖を開け、それを見たはるはすべてを悟る。姉は、けんを非難し始めた時、植木ははるに「浮ついた気持ではない」と弁明した。

 はるは、実は『ドイツの脱走兵』のことを知らせに来たのだった。はるが帰った後、しばらくして、植木が裏の小屋に住んでいる安兵衛、漁師の川口勇平とドイツ兵のウインケルを発見し、けんを呼んだ。

 思案の結果、ウインケルを助けることにして、勇平とウインケルが三保へ舟で向かった。ところが、未明、憲兵隊がやってきた。憲兵隊の捜査の結果、ウインケルを匿ったことがばれると、安兵衛が自分の責任だと嘘をついて、結果、安兵衛だけが憲兵隊に連行される。勇平は死亡。ウインケルは行方不明。安兵衛は重体となって帰って来た。

 けんは千畳楼にいって、いすゞに勇平の話をする。やはり、いすゞの赤ん坊は勇平の子供だったのだ。いすゞはけんに「フリーラブ」の話をする。

WEBより
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15.大正その5 明暗(大正5年:41歳)

 けんにとって、植木との再会は悦びであったと同時に痛みでもあった。けんは、うしろめたさを感じていた。

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植木は茶の間で、新聞の新しい連載小説『明暗』を読んでいた。話かけると、植木はけんの手を握って「ようやく借家がみつかったよ」と言った。借家は、末廣の目と鼻の先だった。

 6月に入ると、おちょうの病状はさらに悪化した。おちょうは、植木先生に謝りたいといって言っていたそうだが、何も話さず、81歳の生涯を閉じた。おちょうの葬儀は梅陰寺で営まれた。

 千畳楼の茶の間で、けんとイソは四方山(よもやま)話に興じていた。これからの末廣のこと、安兵衛のこと、けんの縁談、話はいすゞのことに及んだ。いすゞは、父親が植木先生と思っているようであった。もしかしたら、大酒の飲みの植木が・・・・いすゞの生年から考えると辻褄があう。

 けんは、いすゞの母親『とも』がどんな女か知りたくて、入江町の居酒屋『白糸』を訪ねた。出てきたのは『およう』だった。『とも』は四つ目の名前で、いすゞの母親『とも』は会いたくもなかったおようだったのである。

 けんは、末廣に帰ってから植木の新しい借家を訪ねた。新しい借家には植木しかおらず、二人は狭い階段をもつれるようにのぼっていった。

解説
 
 明治の32年から大正の4年に話は飛びます。24歳のおけんちゃんも40歳です。おけんちゃんの大好きな植木先生が清水に帰って来るところから話が始まります。
  内容は、おけんちゃんの不倫話ですが、主人公のおけんちゃんになんとか幸せになって欲しいと思います。これが、植木先生の奥さんが主人公の話だったら、ずいぶん気持ちが違うのでしょうね?
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税理士法人森田いそべ会計
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代表 森田行泰
税理士
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■日本公認会計士協会所属
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