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中国・アジアの会計と税務
(5年ほど前に書いたブログから)
先日、公認会計士の研修会があり、中国・アジアの経済情勢や会計と税務について外資系会計事務所の実務担当者から説明がありました。
 
1.中国から見たアジア
中国のアジアの地図は、日本とは逆に南を上にして北を下にしているそうです。
 
 北京の北は万里の長城があり、この長城より北は遊牧民の住むところで、中国はあまり関わりたくないと考えているようです。中国では風水の思想により、北京の紫禁城の椅子は南を向いています。その南には天安門広場があり、さらにその南に広い中国領土とその属国のシンガポール・タイ・マレーシアがあるというイメージです。日本はそれら属国と同じ立場の国であり、たまたま、この百年で中国を追い抜いただけの国といいうイメージのようです。
 
2.日本企業の進出先
 
かつては香港・シンガポールに進出しましたが、香港は中国との合併後、先進国には魅力がなくなったようです。また、シンガポールは税金を下げたためタックスヘブンの対象国となり、逆に日本の課税が強化され、このため魅力がなくなってしまったそうです。
 その結果、今ではタイと中国本土に進出する企業が多いようです。
 
3.タイの現状
(1)投資誘致政策
 タイでは、法人税は5年間免税でしかもその5年間の赤字は繰越が可能です。現実問題として10年間は法人税がかからないそうです。さらに、設備輸入関税も免税されております。タイは仏教国であり、日本人にはかなり人気があるようです。
 
(2)税務に関すること
 タイの財政に占める税収は、法人税が25%、所得税が25%、間接税が25%、関税が25%程度の割合だそうです。
 タイに進出しますと、まず設備関税の恩典と法人税の恩典が受けられます。
 しかし、税務上のトラブルがいくつかあります。
 まず、消費税の還付がなかなか認められず、タイから輸出しようと思う企業にはかなり資金繰りの負担になるそうです。さらに、輸入関税が高く、輸入の20%だそうです。しかも、罰金が非常に高く、輸入品の価格の4倍まで認められているそうです。
 例えば1億円の商品を輸送して関税を支払わないと、罰金4億円と輸入関税2千万円の支払いになるそうです。ただし、話し合い(賄賂つき)によっては1/10以下になるそうです。
 関税の比重が高いので、税収が不足になると税務調査を行うようです。
 
 次に個人所得税ですが、現地人は日本人ほど給与が高くないのであまり税金を支払っていません。日本人は、現地人に合わせて現地人払いの給料のみ個人所得税の対象としておりました。
 これ以外の日本払いの高額の給料については申告しておりませんでしたが、数年前、日本の国税局が手伝い多額の追徴税額を受けたようです。従って日本人はかなり高額の所得税を納めているようです。
 
 これに加え、最近では移転価格問題が生じております。すなわち、法人税がそろそろかかるようになり商品の取引金額が問題となってきているのです。
 つまり、日本からの輸入代金や輸出代金がタイ当局からみて高すぎるとか安すぎるとか指摘されて、税金を徴収されることになります。
 
 このタイの税務署の指導が極めてずさんで、「貴社の場合は売上の○○%が適正利益 だから現在の利益との差額を申告するように」と言われるようです。
そして話し合い(賄賂つき)が行われてめでたく終了するようです。
 
(3)会計に関すること
 タイに限らずアジアの国はすべて国際会計基準に準拠しております。
 そして、会計監査は必要要件で、全ての企業は会計監査を受ける必要があります。
 さらに、決算書は登記する必要があります。
 建前だけ見るとかなりしっかりしているようですが、人材不足のため実態はかなり違うようです。
 
 まず、アジアの国は外部の投資家がほとんど居らず、銀行等の間接金融もあまり発達しておりません。従って、決算書の作成目的は経営のためと税金を支払うための二つだけです。二つの目的ですから、二つの決算書があります。本当の決算書と税務上のものです。
 二重帳簿、三重帳簿は当たり前で、日本の中小企業診断士が日本の税金(ODA)でアジアの企業を診断しようと、100%の企業から「タダで分析してくれるのなら本当の資料を出します。」と言われたそうです。
 また、公認会計士については外資系の会計事務所は質が高いのですが、そこに勤める従業員は日商簿記3級程度が精一杯だそうです。
 したがって、その下の会計事務所のレベルには申すまでもありません。
 
 すべての企業には会計監査が義務づけられておりますが、たった一人で一年間に何百社の署名をした会計士もおり、企業の必要に応じて言うままに署名しているようです。
 最近、あまりにもひどい会計士が処分されたようです。
 
 このように書くとタイはデタラメなようですが、アジアの中では群を抜いて税務も会計もしっかりしている国だそうです。
 
4.中国の現状
 (1)投資誘致政策
  中国では2免3減と申しまして、利益が出てから2年間は法人税を免除し、その後3年間は法人税を半分に減額する投資誘致政策をとっています。
 さらに、設備輸入関税の免税もタイと同様です。
 最近、中国も注目されて進出しようとする企業が多いようですが、進出した企業のほとんどが失敗しており、成功している企業は実は少ないのが現状です。
 まず、中国は人件費が安いと言いますが、人件費が安いのは7~8億へのぼる農民の人件費です。彼らは本当に貧しい生活をしており、教育もほとんど受けておりません。日本人なら1人でできる仕事を10人位でやっているそうです。
 都心部の労働者は質が高いのですが、かなり人件費が上がってきています。
 会計事務所としては、中国進出をやめるよう説得するのですが、それでも中国に進出したい企業が多いようです。
 
 (2)税務に関すること
  中国では、税収の割合について全く公表しておりません。しかし、その割合を推測すると、輸入関税が50%程度と予想され、次に個人所得税(源泉所得税)がかなりのウエイトを占めております。法人税は支払う人が少なく、消費税等の間接税はありません。
 輸入関税は税率がタイと同じく20%で、しかもタイと同様に罰金が異常に高いようです。
 税務調査に入ると話し合いになるのですが、タイと違って賄賂の相談がないこと、さらに誰に渡してよいのか明確ではなく、場合によっては見せしめのため厳格な法律と多大な罰則で対処されるそうです。
 個人の所得税は、タイと同様に日本の国税局が中国に協力して日本払いの給料について高額な所得税を追徴しました。
 現地の中国人はほとんど税金を払っておらず、中国に進出した外国企業が特に高額の納税をしているようです。
 
 今のところ法人税が発生している企業は少ないのですが、法人税がかかるようになると移転価格問題があります。
 すなわち商品の売買価格は、本来企業と企業との話し合いで決まるのですが、日本の子会社となると売買価格が不適正だと指摘されるということです。
 
(3)会計に関すること
 中国では国営企業の時代が長かったため複式簿記は発達しておらず、資金収支が中心の経理を行っているようです。
 貸借対照表という概念が乏しく財産目録を作成するのですが、いわゆる負債の概念が乏しいようです。
 財産目録は“設備一式”とか“建物一式”などと記載されております。一方消耗品に関しては、国営企業の名残を残して鉛筆1本にいたるまで厳密に管理をしているようです。
 これに対して、在庫の管理はほとんどしておらず、在庫がなくなっても気がつかないことが多いようです。
 
 中国では、商取引は現金と引き換えで行う必要があり、売掛金は回収できないことが多いようです。
 特に注意すべき点は、中国では人民公社時代の考えを引き継いでおり、企業で働いた従業員の生活を企業が負担する必要があることです。
 企業は定年退職した従業員の生活も面倒見る必要があり、企業売買においては会計士は人的債務として将来の生活負担分を引当計上するのですが、中国ではその意識が全くありません。
 中国の国営企業を民営化するため日本企業に売却することが多いのですが、中国側は資産だけ査定して負債は一切考えないようです。
 中国に進出する企業はくれぐれも用心した方がよいです。
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税理士法人森田いそべ会計
〒424-0816
静岡市清水区真砂町4-23
TEL.054-364-0891
代表 森田行泰
税理士
社員 磯部和明
公認会計士・税理士

1.各種税務相談・税務申告
2.記帳業務
 3.給与計算・決算指導

■東海税理士会所属
■日本公認会計士協会所属
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