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コロナ時代の現代貨幣理論(前半)

2021-01-25
1.現代貨幣理論とは
 コロナ不況の中、急激に支持者を増やしている経済学があります。MMT(Modern Monetary Theory)という経済学で、日本では現代貨幣理論と訳されております。MMTは『変動相場制で自国通貨を持つ国は、貨幣を自由に発行できるため、インフレが起こらない限り財政赤字が大きくなっても問題ない。』と主張しております。
 このMMTの主張は、日本の財務省を中心とする従来の経済学とは全く違います。日本の財務省は、『日本政府の国債を中心とする借金はいずれ返済しなければいけない。できる限り早く、プライマリーバランスをプラスにしなければいけない。』と主張しているからであります。

(注)プライマリーバランス(Primary Balance)とは、国や地方自治体などの基礎的な財政収支のことをいいます。一般会計において、歳入総額から国債等の発行(借金)による収入を差し引いた金額と、歳出総額から国債費等を差し引いた金額のバランスを見たものです。
2.貨幣(紙幣)とは、政府(日銀)の借用書である。
 従来の経済学の本によると、貨幣が発明される前は物々交換が行われていた。その後、貨幣が発明されたが、貨幣は金や銀などその物自体に価値のある物だった。紙幣も発行されたが、紙幣は金や銀との交換を約束された兌換紙幣だった。(商品貨幣論と呼ばれています。) 
 これに対して、現代貨幣理論では歴史を調べてみたがそもそも物々交換が行われた事実はなく、貨幣の始まりは債務証書であるというのです。(信用貨幣論と呼ばれております。)
 今では、貨幣の中心である紙幣は不換紙幣であり、1万円札の原価は12円というから紙幣そのものには価値はありませんが、貨幣の歴史に対する考え方で経済に対する考え方が大きく異なる結果となります。
3.銀行の貸出が預金を生み出す。
 一般的な考えでは、『銀行は預金を集めて貸出を行う』であります。これに対して、MMTでは、逆に『銀行貸出が銀行預金を生み出し、通貨の発行を促す』と考えております。
 経理実務にたずさっている方は、すぐにMMTの考えに理解を示すものと思われます。銀行が、顧客の預金通帳に貸出金1億円と記載するだけで、貸出金と預金が増加するのです。さらに、借金した企業が預金通帳からお金を引き出そうとすると、銀行は通貨を用意しなければならず、通貨の発行も行われます。(内生的貨幣供給論)
 さすがに従来の経済学でも預金の範囲内で貸し出しが行われるとは説明しておりません。信用創造という言葉で、銀行の貸出に伴って預金が増加することは認めておりますが、少なくとも最初に預金が集められることが貸出の前提と考えております。(外生的貨幣供給論)
4.政府の借金(国債)は、返済しなくとも問題ない。
 『日本の国債は、GDPの2倍、一人当たり900万円もある。子孫に借金を残さぬようできる限り早く返済すべきである。』という主張をされる方がおります。かって私も国家の借入については、危惧した時代もあります。
 しかし、今では考え方はMMTの考えに染まり、『①日本国家(日銀も日本政府の一部です。)には貨幣の発行権があるので、②返済を迫られたら、お金を印刷して渡せばよい。③今大事なのは、景気回復であり、デフレ脱却である。』との考えであります。
 今、我々がお金と認識しているのは、通貨と銀行預金です。通貨の内、紙幣は日銀の借入金として日銀の貸借対照表に計上されております。また銀行預金も各銀行の貸借対照表に債務として計上されております。同様に、国債は政府の債務であります。しかも、この国債は、ほとんどが日本国民の財産(半分は日銀の財産)であります。
 このように、国債・紙幣・預金は、政府・日銀・銀行の債務でありますが、同時に日本国民の財産であります。私に言わせれば、国債をゼロにせよという意見は、銀行預金をゼロにせよとか紙幣の発行をゼロにせよという意見と同じぐらい無茶な意見であります。
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税理士法人森田いそべ会計
〒424-0816
静岡市清水区真砂町4-23
TEL.054-364-0891
代表 森田行泰
税理士
社員 磯部和明
公認会計士・税理士

1.各種税務相談・税務申告
2.記帳業務
 3.給与計算・決算指導

■東海税理士会所属
■日本公認会計士協会所属
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